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何度かページを捲ってはさらっと目を通す。あまり深く読みはせずに次々と進む。あっという間に最終ページにたどり着き、バタンと音を立てて『エーアデと魔法の歴史』を閉じた。
「おかしい」
シエルは首を傾げ腑に落ちない顔をする。更に仏頂面でそれを本棚に押し込む。
「綺麗事ばかりじゃない!」
シエルが怒っているのは求めていた知識が得られないからだ。歴史など誰でも知っていること。彼女が知りたいのはその中身だ。
勇者と魔王の伝説の戦いについて、書いてある本は一切ない。エリート魔法学校の図書館でも欲しい知識がない。
「どうかしてるわ! この著者も、学校も、世界も!!」
金のロングストレートの髪を掻き上げ、気持ちを落ち着かせるために窓を開ける。
本を読んでいたせいか眩しくて目を細める。痛いほどの太陽の光。青空。細かい雲が木々の隙間から見え、穏やかな朝であることに気づかされる。
深呼吸をして振り向けば、重厚な扉が場違いな空気を醸していた。
「……禁書とか読んでみたいけど」
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