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それは禁書の扉。黒く重そうなそれが開いたところは、この六年間見たことがない。
図書館が燃えても、地下へと続く扉は中にある書物を守り切るに違いない。それほど重要なものが管理されているのだから、伝説の大戦に関するものもあるはずだ。
地下へ通じる扉をじっと睨みつける緋色の瞳。何とかして開けられないものかと考え、しかし途中で馬鹿らしくなって息を吐き出す。
「つまんないの」
シエルは急に熱が冷めてしまう。求めていた情報が見つからなかったことが特にシエルをがっかりさせた。
「魔王がいた時代に生まれたかったな。生活のためなんて魔力の無駄よ。わたしも戦いたいな」
シエルは校内にある図書館を出る。廊下には誰もいなくて、歩く音がいやに響き渡る。
グリューン魔法学校は西のヴェス国にある。ここは勇者が生まれた場所で、様々な伝統が残る古い町。
勇者が使ったとされる真の剣に倣い、魔法から剣術まで戦いの全てを叩き込まれる。つまり戦うための教育をしている学校だ。
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