SPELL 1

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 だが、シエルにとっては望んでいた日々だ。戦いが好きな彼女は、誰もが驚くほどの魔力とテクニックを持った優秀者。シエルの魔法に勝てる者はグリューン魔法学校にはいない。教師でさえ劣るほどだ。  だからこそ戦いの場にいたいと、シエルは願って入学したのだ。 「もっと戦いたかったな」  しかし今日は卒業式である。十八歳のシエルは学校を卒業して、東のオステ国で働く。  オステ国最大の企業、魔法研究所。戦いとは無縁の場所に就職したのには訳があった。 「先輩っ! シエル先輩!!」  考え事をしながら廊下を歩いていると、どこからか声がして立ち止まる。バタバタと忙しない足音に振り向けば、見慣れた長身が駆けてくる。  ――――童顔が近づいてくる。  女の子みたいに可愛い童顔。それにも関わらず、長身。その不釣り合いな姿が何とも滑稽で可笑しい。シエルは思わず噴き出す。  ――――恰好いい顔をしていたら惚れたかもしれないのにな。  あくまで可能性。本当に付き合うことはないだろうと苦笑いを浮かべたシエルだ。
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