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「どこにいたんですか!」
「どこって、図書館だけど」
童顔な彼、マールはショートボブの茶髪を汗で濡らし、そのせいで天然パーマが際立つ。同じ色の目は泣きそうになりながら訴える。
「卒業式!」
「うん。今から行く」
「こっちは教室です。講堂は反対です!」
「わかってる、わかってる」
「わかってません!」
一つ下の後輩であるマールは顔を紅潮させて怒る。反省する様子がないシエルの笑顔に、マールは項垂れてしまう。
そこを逃さずシエルがデコピンすると、マールは驚いて後退する。
「痛!」
「前髪切りすぎてない?」
「いいんです!」
言われて、更に顔を赤くしたマールは、短い前髪を必死に引っ張る。伸びるはずもなく、ウェーブした髪は眉の上で揺れる。
「もう卒業式始まってます! ぼくまで怒られるじゃないですか!」
「わかってるから」
シエルはからかうのをやめて、今度こそ講堂に向かって歩き始める。そんなシエルの少し後ろをマールがついていく。
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