37人が本棚に入れています
本棚に追加
「マールさ。わざわざ迎えに来てくれたの?」
「主役がいないからって、校長に頼まれました」
「ふーん。そういうこと」
マールがシエルを慕うようになったのは、シエルが魔法学校に入学した翌年。マールが一年生の時だ。
合同演習でシエルの姿を見かけ、その魔法の素晴らしさに憧れた。すっかりシエルの虜になったマール。自らの希望でシエルの世話をするようになった。
授業以外の時間は常にマールと一緒にいたが、お互いに恋愛感情を抱いたことはない。
当初は付き合っているのではと囁かれたが、シエルの素っ気ない態度に噂も消えてしまった。
――――友達いないし、暇だったから別にいいけどね。ま、それももうすぐ終わりね。
シエルはクスっと笑う。
今日は卒業式。その主役はシエル。彼女は首席卒業者である。誰よりも力があるということだ。
講堂の屋根の上。鮮やかな赤い校旗が風に揺れている。剣と炎が描かれるそれは、シエルが使う火魔法を表したものだ。
今、グリューン魔法学校で一番の実力者は火魔法使い。つまりシエルだということだ。
最初のコメントを投稿しよう!