SPELL 1

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「マールさ。わざわざ迎えに来てくれたの?」 「主役がいないからって、校長に頼まれました」 「ふーん。そういうこと」  マールがシエルを慕うようになったのは、シエルが魔法学校に入学した翌年。マールが一年生の時だ。  合同演習でシエルの姿を見かけ、その魔法の素晴らしさに憧れた。すっかりシエルの虜になったマール。自らの希望でシエルの世話をするようになった。  授業以外の時間は常にマールと一緒にいたが、お互いに恋愛感情を抱いたことはない。  当初は付き合っているのではと囁かれたが、シエルの素っ気ない態度に噂も消えてしまった。  ――――友達いないし、暇だったから別にいいけどね。ま、それももうすぐ終わりね。  シエルはクスっと笑う。  今日は卒業式。その主役はシエル。彼女は首席卒業者である。誰よりも力があるということだ。  講堂の屋根の上。鮮やかな赤い校旗が風に揺れている。剣と炎が描かれるそれは、シエルが使う火魔法を表したものだ。  今、グリューン魔法学校で一番の実力者は火魔法使い。つまりシエルだということだ。
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