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しかし、自分の将来のことだ。人の顔色を窺いながら決めるべきことではない。
シエルは手を握り締めて、真っ直ぐに正面を見据える。エストレジャがシエルの言葉を待ち、ジュビアも聞く体勢でいた。
「そんな働き方したくない。わたしには魔法が必要なの。どうしてもっ!」
「なぜ、そこまで魔法にこだわるんだい?」
ジュビアの問いに、一瞬黙り込んだシエル。
「わたしの家はとても厳しくて。魔力を失ったなんて知れたら、もしかしたら命がないかも」
「命がない? そりゃ、ちょっと大袈裟――――」
「大袈裟じゃないわ!」
大声に驚いたエストレジャは言葉を止める。再び声をかけようとして、シエルの身体が震えていることに気づく。
「命がないって本当のことなのか?」
「そうよ」
「嘘でも大袈裟でもない。一体、君の家はどうなっているんだい?」
「ごめんなさい。それは言えない」
我がままだ。これからのことを考えてくれていたのに、どうしても必要だと魔法を求める。
もしかしたら見捨てられるかもしれないと、シエルは二人の様子を窺う。
「それならば残った道は一つしかないね。エス」
ジュビアは笑顔を向けてきた。きょとんとした顔をするシエルをエストレジャは笑った。
「心配するな。絶対に見捨てない」
「まだ死なせるわけにはいかないからね」
とても頼りになる二人。今になって初めて、恵まれていると気づいた。
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