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古い文献の多くは研究目的で書き写すなどしてコピーを作る。特に古いものは風化してしまわないようにコピーとはいえ厳重に保管されているという。
今では書き写さなくとも、コンピュータなどを使ってデジタルに保管出来ると聞いたことがある。実際にシエルは見たことがないので、どれだけすごいことなのかはわからない。
「『勇者の日記』にコピーがあるの?」
「誰かが書き写したんだろうな。禁書の棚から取ってきた」
シエルは力が抜けるようにまた座る。
「待ってよ。禁書の扉、どうやって開けたわけ?」
「開いてたんだよ」
「は?」
「盗賊がグリューン町にいた話は知ってるだろう?」
確か祈りの儀式と同じ日にグリューン町、特に魔法学校に盗賊が入って大事なものを盗んだと聞いた。今でも争いの痕跡があり、ここ魔法訓練施設もかなり壊され、やっと修理出来たと話していたばかりだ。
「その関係で禁書の棚を調べて、盗まれたものを特定する作業をしていたのが俺だ」
「だからって施設長まで盗むなんて」
「教師免許の剥奪。町どころかヴェス国にいられなくなるかもな」
あっさりと言ってのけたエストレジャに掛ける言葉が見つからない。同じ学校の中にいたのに、今では彼のことがよくわからない。
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