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「言い伝えが書かれてる、この下の部分を見て欲しい」
シエルはごくりと唾を飲み込んだ。
「"あの召喚幻獣がいつか封印から解かれると思うと、世界を救えたのか救えなかったのかわからなくなる"」
エストレジャが読んだ文面に、沈黙が訪れた。すでに知っていたジュビアは成り行きを見守るだけ。エストレジャもシエルの反応を待つ。
「施設長。ちょっと待って」
「わかったか。勇者は召喚幻獣を知っていたんだ」
「でも召喚幻獣のことを調べてどうするの?」
「魔法が使えないなら、召喚幻獣でも捜すしかないだろ」
シエルは驚いて大声で叫びそうになったが、ジュビアが口を押さえる。
「静かに。見つかるとマズイんだから」
「……はい」
深呼吸をしてから、再びエストレジャに向き直る。
「本気で言ってるの?」
シエルが聞くと、横からジュビアが答える。
「魔力を失ったら命がないと言っていたね。だったら、こちらの可能性に賭けるしかないだろう」
「でも……」
「あるかどうかも、その正体もよくわからないものを捜すなんて、どうかしてる?」
ジュビアに言われて、シエルは言葉に詰まる。
確かにそうだ。希望と言うにはあまりにも儚く、消えてしまいそうなか弱いものだ。
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