SPELL 8

10/17
前へ
/241ページ
次へ
「言い伝えが書かれてる、この下の部分を見て欲しい」  シエルはごくりと唾を飲み込んだ。 「"あの召喚幻獣がいつか封印から解かれると思うと、世界を救えたのか救えなかったのかわからなくなる"」  エストレジャが読んだ文面に、沈黙が訪れた。すでに知っていたジュビアは成り行きを見守るだけ。エストレジャもシエルの反応を待つ。 「施設長。ちょっと待って」 「わかったか。勇者は召喚幻獣を知っていたんだ」 「でも召喚幻獣のことを調べてどうするの?」 「魔法が使えないなら、召喚幻獣でも捜すしかないだろ」  シエルは驚いて大声で叫びそうになったが、ジュビアが口を押さえる。 「静かに。見つかるとマズイんだから」 「……はい」  深呼吸をしてから、再びエストレジャに向き直る。 「本気で言ってるの?」  シエルが聞くと、横からジュビアが答える。 「魔力を失ったら命がないと言っていたね。だったら、こちらの可能性に賭けるしかないだろう」 「でも……」 「あるかどうかも、その正体もよくわからないものを捜すなんて、どうかしてる?」  ジュビアに言われて、シエルは言葉に詰まる。  確かにそうだ。希望と言うにはあまりにも儚く、消えてしまいそうなか弱いものだ。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加