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「グリューン町を出て旅をしていれば魔力喪失の謎も、攻撃してきた犬のこともわかるかもしれない」
エストレジャの力強い言葉に、シエルは目を見開く。
魔力がなくなったことばかり嘆いていて、なぜなくなったかなど考えることすら放棄していた。犬のことなどすっかり忘れていたことに自分自身驚く。
エストレジャは髭をさすりながら、嬉しそうにシエルの反応を見る。
「捜すとして、どうやって?」
「それは『勇者の日記』に頼るつもりだ。ここに召喚幻獣のことは、ほとんど書かれていない。だから勇者と同じ道を行けば、必ずどこかで出会えるはずだ」
「なんか頼りない」
「そう言うな。これでも相当考えたんだぞ。感謝くらいしろっ」
それは、すぐに行くと返事が出来るような内容ではなかった。
何もかもが雲を掴むような話。召喚幻獣の存在すら怪しい。エストレジャが見つけた『勇者の日記』も本物かどうかわからないのだ。
「そもそも、召喚幻獣ってなに?」
シエルが最もな質問をぶつける。召喚幻獣という言葉の意味はわかっても、それが一体何であるかはわからない。
『勇者の日記』を幾らか読んだであろう二人の喋り方からも、正体がそこに書かれているわけではなさそうだ。
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