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たくさんの映像の中に、そのドラマは紛れ込んでいた。私が初めて涙を流したドラマだった。
月額制の映像配信のサイト。この頃仕事を再開し、今後は休む時間が少なくなるだろうと思った時、ふと登録を思い立った。外に出かけて行けなくても、家で楽しめるものを増やそうと思ったのだ。
お金があまりないので、それ程作品数が多くないサービスを探して会員になった。どんなものがあるかな、と思いサッサとスマホをスライドしている内に、それを見つけた。
いつ頃放送していたのだったか、恐らくあの頃は未だ実家にいたので高校生ぐらいの時かもしれない。深夜に入る手前辺りの、眠気にまだ抵抗出来た時間帯に、テレビに映されていた様に思う。自分から見るような類のジャンルでは無かったので、おそらく母が見ていたのを一緒に眺めていたのだろう。
それは親子の交流の難しさについて描かれたドラマだった。たっぷりの善意と無意識の悪意が混じった居心地の悪さが特徴的だった。よくそんな作品を親子で見ていたよな、と思う。その時の母の顔は覚えていない。
ただ、その作品の最終回、内容はあまり覚えていないけれど、最後のテーマ曲が流れていた時に確か私は泣いていた。その時が、ドラマを見て初めて涙を流した瞬間だった気がする。元々物語には感情移入しやすく、何ならその事が嫌でそう言った作品を避けていた時期もある程だったのだが、そこまで心が動いたのはこの作品ぐらいだった。
少し迷ったが、再生ボタンを押すことにした。
楽しめるだろうか。当時よりも不安やら心配事やらがハッキリし、それと闘うための努力が大事な人を振り回すことを知った、今の私は、また同じように涙を流しながらエンディングを迎えるのだろうか。
あの時持っていた感情は、今、歳を重ねて塗りたくった色んなものでコーティングされている。別に防御力は上がらないけどね、と笑い、私は画面に指を伸ばす。
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