1人が本棚に入れています
本棚に追加
映画も3分の2が終わったところで、
妙に静かになったことに気付いた。
しまった、うっかり呼び出すのを
忘れてしまった。
そう思った瞬間、肩に重さがかかった。
隣に目をやると、
凛子がもたれるようにして寝ていた。
「自分の観たがっていた映画で
寝るか普通。」
文句を言ってみたが、
いつものように反抗して来ないと
なんだか拍子抜けしてしまう。
普段は意識していないのに、
長いまつ毛や艶やかな唇が
やけに魅力的に見える。
起こしてしまわぬように
じっと身体を固めていたが、
ふつふつと沸いてきた好奇心に駆られ、
彼女の小さい手の上に
そっと自分の手を重ねた。
初めて触れる肌の柔らかさや
凛子の温かさがじんわり伝わってきて、
自然と鼓動が高まる。
「...合格。」
突然の呟きに驚いて、
颯太は咄嗟に手を離した。
「なんだ、試してたんか。
今のはあれだ、事故だ事故。」
動揺を隠そうとして喋れば喋るほど、
一生懸命弁解している自分という
恥ずかしさが増してきて、
そっぽを向いた。
「そのままにしててよ。」
お構い無しにそう呟いた凛子の頬が
ほんのり紅潮していたことを
颯太は知らない。
最初のコメントを投稿しよう!