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平日の昼間だというのに、
これだけの人出があるとは
観光地なだけある。
賑わう人混みに身を任せて
流されるように歩いて行くと、
とある神社にたどり着いた。
赤い鳥居をくぐると、
頭上には無数の風鈴が
ぶつかり合わない絶妙な間隔を保って
吊るされていた。
不思議と周りの会話がミュートされて、
風鈴の奏でる涼しげな音だけが
鮮明に耳に届く。
風鈴は1つ1つが違った音を持つ。
それは個性のようなもので
同じものは1つとしてない。
ソミファ♯ラレシド
風向きによって音の鳴るタイミングが
少しずつずれていき、
不規則なメロディが作られる。
時々音が重なって和音が生まれるが、
どの風鈴の声なのか聞き分けることは
颯太の耳を持ってしても難しい。
しかしその中で確実にドミソの和音を
出している風鈴を見つけた。
他とは違って、
1つの風鈴から乱れることなく
3つの重なった音が鳴るのだ。
柔らかな曲線の透明ガラスに
藍色の線がランダムに波打って、
線の周りに小花に見立てた
黄色い斑点が散らばっている。
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