優しい魔法

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優しい魔法

俺は編みぐるみを動かした。いや、ごめん。情報が少なかった。正しくは「僕は手を使わずにウサギの編みぐるみを動かした」が正解だ。 べつに糸で引いたとか、かぜで飛んだとかじゃない。俺がこちらに来いと思ったら、彼が来てくれたのだ。俺の部屋の端にある編み物用の作業台は結構大きい。その奥の棚にある編みぐるみなんてとてもじゃないけど手を伸ばさないと持つことは不可能だ。 でも俺が手を伸ばしたら、彼はひょいと立ち上がった。驚いて身体が固まっている俺の前、もっと言うと作業台の前のほうに歩いて行きそこに着いたらまた倒れた。 俺は驚きで固まっていた身体が動ける事を確認して、編みぐるみを触った。掌に載せて、何か変なものが付いていないか探した。 何もない事を確認すると、今度は隣の勉強机にあるスマートフォンで調べ回った。ポルターガイストか、超能力か、霊的なものなのか。慌てふためく俺にある言葉が降ってきた。 魔法 この言葉はこれ以上ないくらいにしっくりきた。
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