占いの館

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僕の名前は『紫翠(しすい)』、4年制の大学を卒業して東京都内の自動車製造会社の研究所に勤めている27歳の平凡な男性会社員だ。 独身の僕は都内の賃貸マンションに独りで暮らしているが、会社に就職して5年になる僕は仕事にも慣れて少し時間を持て余していた。 僕は何か人のためになるようなことはできないかと考えていたが、僕は幼い頃から持っている不思議な能力を人のために使うことはできないかと考えていた。 幼い頃から僕が持っている不思議な能力とは、人の考えていることが分かる読心術と人の未来を予知する能力だ。 小学生の頃の僕は、人の考えていることが分かったり人の未来を予知できるのは、ごく当たり前のことで特別な能力であることに気が付いていなかった。 このため小学生の頃、僕が同じクラスの友達が考えていることを言い当てたり、クラスの友達の身にこれから起こることを言い当てたりすると、周りの友達から気味悪がられて仲間外れにされたことがある。 僕は成長するにつれて自分は特別な能力を持っていることを自覚するようになって、僕は自分の心を閉ざして人の心を読んだり予知したりしないようにする方法を身につけた。 このような方法を僕自身は「心に鍵をかける」と呼んでいる。 また僕は人の心を読んだり予知したりすることができる能力を、他の人に気が付かれないように常に注意していた。 心に鍵をかける方法を身につけるまでの僕は、他の人が考えていることや他の人の未来が分け隔てなく川の流れのように止まることなく、自分の心の中に流れ込んでくるような状態だった。 このため大勢の人がいる場所では、他の人の考えていることや他の人の未来が膨大な情報として自分の心の中に流れ込んでくるため、自分自身混乱してしまうことがよくあった。 特に他の人の心を読むと相手の考えている裏の考えが手に取るように分かってしまい幻滅させられることがよくあるため、普段の僕は心に鍵をかけて人の心を読まないように封印している。 僕は占いに興味があって、よく雑誌に載っている占いやインターネットの占いサイトを見ているが当たったためしはない。 未来を予知することができる能力を持っている僕が何故占いに興味があるかと言うと、何故か僕は自分自身の未来を予知することがまったくできないからだ。 もし自分自身の未来を予知できてしまったら、僕は自分自身の人生がとてもつまらないものになっていたのではないかと思う。 人はこれから起こること、すなわち自分の未来はわからないわけで、僕自身自分の未来が予知できないのは、これはある意味良かったと考えている。 こんな僕の能力が人のためになるのかどうかはわからなかったけれど、僕はこの能力を占いとして他の人の未来を見て伝えてみようと考えた。 ただし相手の人の全ての未来を伝えることは相手の人生を狂わせてしまう可能性もあると考えて、1年以内に起こる出来事しか占うことができないという制約を設定して占い師をやってみることにした。
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