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「水樹さんは、どなたか大切な方を亡くされましたか?」
どう話を切り出そうか迷いながら、僕は正面突破を決め込み率直に水樹さんに質問をぶつけてみた。
「よくわかりましたね!
10ヶ月ほど前に、お付き合いしていた彼氏を病気で亡くしました。
彼がいなくなって、今の私はどうしたらいいのか分からないのです。」
僕には水樹さんの表情が急に暗くなったように感じた。
僕は水樹さんの未来をありのままに話していいものか判断に迷っているとき、水樹さんとは別の人の感情が僕の心の中に流れ込んできた。
その感情は、水樹さんを温かく見守るような優しさに溢れているが、この部屋には僕と水樹さんしかいない。
その感情の持ち主は誰なのかわからなかったが、その人物の名前を読み取った僕は、水樹さんに聞いてみることにした。
「『結仁(ゆうと)』さんをご存じですか?」
驚いた水樹さんが、
「はい、今お話しした病気で亡くなった彼氏です。」
その話を聞いた僕は、今この部屋の中に水樹さんの恋人の結仁さんの魂が存在しているということを確信した。
「水樹さん、今から僕は独り言を言いますが、気にしないでください。」
僕は水樹さんに伝えると、水樹さんの恋人の結仁さんに話しかけた。
「貴方の気持ちを水樹さんに伝えてもいいですか?」
この僕の話に水樹さんは驚いていたが、僕がかまわず結仁さんの心を読み続けていると、
「ぜひ、お願いします。」
という結仁さんの感情を読み取ることができた。
僕は水樹さんに、
「驚かないで聞いてください。
この部屋の中に結仁さんがいます。
今から結仁さんの気持ちを水樹さんにお伝えします。」
と話して、結仁さんの心を読んで水樹さんに結仁さんの気持ちを伝えた。
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