喪女の夏は丑三つ時

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 で、私は近所の廃工場……心霊スポットにいる。  時刻は午前二時。所謂(いわゆる)丑三(うしみ)つ時というやつだ。  こんな薄気味悪いこと極まりない場所に来た理由はただ一つ、肝試しをするためだ。  もちろん一人で肝試しをする、なんて切ないことをするために来た訳じゃない。  むしろ逆、私が連中ののだ。  この廃工場はかなり有名な心霊スポットらしく、様々なオカルト雑誌で紹介されているようだ。最近ではここを題材にしたホラー映画も上映されて観光目当てでやってくる人も多い。  そして一部のバカ……陽キャ、バカップル、DQNどの呼び方でも良いが、そういう手合いが真夜中に騒ぎまくる。この声がとてもうるさいし、周辺を荒らすので性質(たち)が悪い。  というのもこの廃工場、有名なだけで本当に幽霊は現れないのだ。私自身小さい頃は何度も勝手に侵入したけど霊どころか怪奇現象すら起きなかった。なので期待わくわくで入ったバカ共は肩透かしで腹を立てて騒ぎ、近所一帯を荒らすのだろう。  本当に迷惑すぎる。  なので、私がここで天誅(てんちゅう)を下す。  徹底的に恐怖のどん底を味わわせて、二度とこの地に踏み入れたくなくなるようにしてやる。  それが私の思い出作り。  一応アウトドアだし、大騒ぎだし。うん、セーフ。  いや、全然セーフじゃねーよっ!?  どうしてそういう結論に至ったんでしょうかねー?何をどう間違ったら青春を謳歌(迷惑だけど)している人を使って憂さ晴らしすることが思い出作りなんでしょうか?私、歪みすぎじゃない?これが腹黒女子の暗黒微笑……ってやかましいわ!  あー、やっぱりダメだ。  私はどこまでいっても性格がねじくれ曲がった、修正不可能な救いようのない女だ。
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