第三章 知られざる過去が明るみに

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 今から二十年前のある日、穣は息子がお世話になっているからということで、食べきれない林檎を届けに同級生の女子の自宅を訪れた。まだ日の高い午後でなければ、この家にくることをもっと楽しみにしていた。今の時間だとここにくるまで、小さなお店をやっている近所のおばあちゃんに、女の子みたいだと勘違いをされる。それが嫌なので、正直この時間帯に近所を歩きたくなかった。けれど、お小遣いがもらえるというので、つい、そのことを忘れて、いってくると言ってしまった。今回は運よく会わずに済んだけれど。  ドアホンの前にいくと、それまで両手で持っていたビニール袋を地面に下ろす。ドアホンに向かって背伸びをし、指先に触れたボタンをなんとか押す。  ドアホンから聞こえてきた声に対し、緊張気味に用件を告げる。しばらくして玄関のドアが開いた。  母親が不在ということで、その姉が嬉しそうに 「帰ったら、教えてあげなくちゃ。好物だから、きっと喜ぶ」  と笑みを見せた。  少女の姉という人は、きれいで、優しそうな人だなという印象だった。そういえば、目前にいる人は高校生だと親から聞いたが、なぜかとても大人に見えた。 「じゃ……帰り、ます」  オドオドとした口調で言い、(きびす)を返そうとする。 「ちょっと待って。あの子の様子とか聞きたいから、少し上がってって。それに、もらいっぱなしっていうのも、ちょっとね」 「……?」  最後の一言に疑問を覚えつつも、まだ時間が早かったので、そうすることにした。 「……お邪魔します」  リビングに通され、椅子に座る。  自分の家よりも広いリビングに慣れていないのか、緊張してしまい、顔が強張っているのがなんとなく分かる。
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