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「あの子、学校ではどんな感じなの?」
正面のキッチンで冷蔵庫からオレンジジュースの入ったペットボトルを取り出しながら、彼女が聞いてきた。
「千鶴ちゃんは、誰とでも仲よく話してて、一人でいるところは、見たことない……です」
年上の人が相手なので、丁寧な言葉を使わなければいけないことを思い出し、慌てて付け加えた。
「無理に敬語を使おうだなんて思わなくていいよ。それはもうちょっと大きくなってから」
慣れない言葉を使っていることを見透かされていたようで、クスリと笑ってみせた。
「じゃあ、クラスで人気者ってこと?」
「そうだ……と思う。僕は誰とでも話せないし、ちょっと、あの子が羨ましいなって」
「やっぱりそう思う子って、いるわよね。……ま、私もそうだけど」
「えっ?」
予想もしていなかった一言に、穰はポカンとする。
オレンジジュースの入ったコップを穣の前に置く。そのまま、正面の椅子に座る。
「そんなに不思議?」
笑いながら尋ねてくる彼女に、コクンとうなずく。
「だって、こんなに優しい人、今まで、見たことないから」
「お姉ちゃん、ただいま~!」
ドアをバタンと開けた少女が大声を出した。
「おかえり」
「お友達と一階のお部屋で遊ぶの!」
満面の笑みを見せる少女に、
「あんまり、お友達を困らせちゃダメよ」
「は~い!」
元気に返事をして、バタバタと廊下を駆けていく足音が聞こえた。
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