第三章 知られざる過去が明るみに

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『もしも~し、獅乃~?』  場違いなほどに軽い口調で、穣との電話が続いていることを思い出した獅乃は、苛立ちをあらわに、低い声で応じた。 「まだあるか?」 『ねぇよ。話せてこっちはスッキリしたぜ』  穰の清々したという口調に、唇を噛みしめた獅乃は、無言のまま通話を終了した。  それに倣って、滝坂も録音を終了する。  獅乃はスマートフォンを懐に仕舞って、右手の甲を額にあてて、シートにもたれかかった。横目で滝坂を見る。 「説明、いるか?」 「……いらない」  拗ねたような言葉を最後に、滝坂の頬から涙が伝う。緊張の糸が切れたのか、声を抑えながらも、涙がとめどなく溢れてくる。 「お前が泣くなよ」 「あんたの代わりなんてしたくない!」  滝坂は泣きながら怒鳴った。 「だろうな」  内心では、あえてそう言った滝坂に感謝しつつも、獅乃は素っ気なく告げた。  獅乃は無言で、聞き込みをする予定の場所へ車を発車させる。  運転しながら、獅乃がボソッと言った。 「聞き込みはしないぞ」 「えっ?」  そのためにきたんじゃないの? と言わんばかりに聞き返された。 「適当にぶらつくから、その顔、なんとかしておけ」  獅乃は溜息を吐きながらぶっきらぼうに告げて、車から自宅周辺の様子を探ることに決め、アクセルを踏んだ。
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