57人が本棚に入れています
本棚に追加
第四章 罪から逃れようとする男
それから数日後のある日、デスクで捜査資料の整理をしていた獅乃と滝坂の許に、通報が入る。
殺人事件発生と聞き、整理の手を止めた獅乃は、その上に手帳を広げ、現場の住所を走り書きする。
それが終わると、手帳を鞄に入れながら、捜査一課を出ていってしまう。
「捜査資料の整理も、仕事のうちでしょうに」
滝坂は呟きながら、バッグを片手に獅乃の後を追い駆けた。
駐車場に向かった滝坂は、声を張った。
「獅乃!」
今にも出発しようとしていた一台の黒い車が停まる。
運転席の窓が開けられ、不機嫌そうな獅乃が顔を出した。
「さっさと乗れ」
獅乃は言いながら窓を閉めた。
滝坂が乗り込むと、獅乃は思い出したようにスマートフォンを取り出して、電話をかけ始めた。
「獅乃です。刀川さん、滝坂と一緒に殺人事件のあった現場へと急行します」
獅乃は顔をしかめながら、留守電にそう吹き込むと、電話を切った。
「飛ばすぞ、つかまっていろ」
スマートフォンをポケットに仕舞った獅乃がハンドルを握りながら言った。
パトランプをつけた獅乃の車が猛スピードで、駐車場を後にした。
それから五分後、かなりのスピードで走り抜けたので、とても早く着いた。
目の前に聳え立つのは、それなりに古いマンション。ところどころ風化しているところもある。
最初のコメントを投稿しよう!