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獅乃と滝坂は入り口で管理人に、声をかけると、部屋の前(三〇六号室)まで案内してくれた。
規制線の張られた入り口に着くと、制服警官が頭を下げた。彼らに警察手帳を見せ、鑑識が入ったことを聞いた。白手袋と靴のカバーをつけてから、現場に入った。
玄関から入るとすぐに部屋となっていた。部屋の手前にはキッチンがあり、その隣の廊下を抜けた。
室内はさほど広くないワンルーム。
右側にベッドがあり、部屋の奥の方にはテーブルがひとつ。テレビはない。
テーブルを超えた先に、遺体はうつ伏せで倒れていた。
壁や窓には、鮮血が飛び散った跡が残っていた。
獅乃は怒りを押し殺して、合掌すると、観察を始めた。
――相当、怒っているんだろうな。
滝坂は内心でそう思いながら、合掌した。
遺体に視線を向けると、なにかで殴られているようで、周囲には血溜まりができていた。
頭はものを上から振り下ろしたのではなく、横から殴りつけたような痕が残っていた。
右側に向けられた顔の口からも鮮血を吐き出していて、ほかに殴られたときのものだろうかと推測した。普段着なのだろう。上下とも紺のジャージ姿だった。
ごく普通の顔立ちをしていて、歳は五十歳ほどか。
この部屋で一人暮らしをしていたのかもしれない。二人暮らしでこの広さなら狭すぎる。
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