第四章 罪から逃れようとする男

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 ――知り合いによる犯行か? 凶器は……?  獅乃は遺体から視線を離して、周囲を見渡すと、血のついた金属バッドが転がっているのを見つけた。  近くにいた鑑識に尋ねた。 「指紋は?」 「丁寧に拭き取られており、検出できませんでした」 「調べたのは持ち手だけか?」  その問いに鑑識がうなずいた。 「血痕がついているところ以外、すべて調べてくれ。結果は、俺か、女監察医に連絡を」 「分かりました。念のため調べが済み次第、獅乃さんと、瀬奈さんにご連絡します」  獅乃はその言葉にうなずくと、遺体の許へ戻った。  身体をよく見るととても痩せていた。  楽にさせるために? 自分の人生を賭けてまで? でも、人殺しは罪だ。そこまでしなければならなかった理由がどこかにあるはずだ。  獅乃は立ち上がって、キッチンの下の棚を開ける。  包丁の(たぐい)が無い。  一本くらいあるものと思っていたが、それがない。  もともと、包丁を使わない人だからというのも考えられなくはないが……。  獅乃は立ち上がって、右隣の冷蔵庫を開ける。  包丁を使いそうな肉や野菜などが収められていた。  もともと使わない人だというわけではないが、ここに警官がくる直前まで、犯人は現場にいたのか? いや、そもそも、これもそう思わせるための偽装だというのも考えられる。必要だったから、犯人が持ち出したのか?  今のままでは情報が少なすぎる。  もっと調べなければ……。  獅乃は考え込みながら、唇を噛んだ。  その後しばらくして、現場を立ち去った。  帰るついでに、隣人に話を聞いた。 「ああ、知り合いの方がいたみたい。結構若い男性だったから、息子さんかもしれない」  と言う情報を得られた。  礼を言い、その場を去った獅乃を見つめる滝坂は、彼の怒りがちっとも収まっていないことを感じ取って、また熱くなっていると、内心で溜息を吐いた。
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