「サロメ」を上演したいわたしたち

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 ぼくたちがいまいるのは、演劇部の練習に使わせてもらっている、特別教室のなか。部長であるぼくを含め、演劇部の七名全員がそろっている。  パイプ椅子に座った佳那寺先生が、上体を背もたれから離し、立っているぼくを下から覗きこむようにした。 「いや、時間もだけど内容がさ、もちっとこの、高校生らしいのをさ」 「高校生らしい、と言いますと?」 「だから、ほら、春の演劇祭でやったじゃない、『ぼくらの文化祭』。あれも久我山(くがやま)のオリジナル脚本だったよな。文化祭をめぐるドタバタ劇で、客席大ウケだったじゃない。久我山は才能あるんだから、ああいうのを書けばいいじゃない」  久我山というのがぼくの名前だ。フルネームは久我山(くがやま)(つばさ)。二年生で部長をまかされ、脚本もたいていはぼくが書いている。  ぼくは反論する。 「でも、今回はこれでいきたいんです」 「強情だな。おい久我山、お前、本当に『サロメ』わかってんだろうな?」 「もちろんです。『サロメ』はオスカー・ワイルドが新約聖書のエピソードをもとに書いた一幕ものの戯曲です。内容はこうです」  ぼくはざっと「サロメ」の内容を述べた。
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