「サロメ」を上演したいわたしたち

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「ですから、あくまで一部を劇中劇として使うだけです」 「だーかーらー、一部だけとはいえ、使うなら、使いたい理由があるんだろ?」 「片想いの男を、殺してでも自分のものにしたいという、狂気のような恋の情熱に強く惹かれました。そして、男を手に入れるために踊るシーンを、ぜひとも九頭宮(くずみや)沙希(さき)先輩に演じていただきたい、と思ったんです」  佳那寺先生の目が、すっとぼくの後ろのほうへ流れた。三年生の九頭宮沙希先輩が、ぼくの陰に隠れるようにして、モジモジしながら立っている。  先生が「おい、九頭宮」と二回呼んで、ようやく先輩はぼそぼそと返事した。 「……はい」 「お前さ、いつも言ってるだろ。もうちょっと背筋しゃんとのばしなさい。はい、気をつけして」 「はいっ」  叱られるような言い方に、沙希先輩は、いったんはさっと背筋をのばした。が、すぐにへなっと猫背に戻ってしまった。先輩の筋金入りの猫背を矯正するのは、なかなかむつかしいようだ。 「まったくもう……九頭宮は、地はとってもいいんだから、もっとしゃんとして、ハキハキしゃべれば、すごい美少女で通るのになぁ。でも、そのままじゃ、ろくに彼氏もできないだろ?」
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