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「五十で独身の先生に言われたくないです」
「なに?」
「ハッ? どうしてかしら? 言っちゃいけないこと言うときだけは、ハキハキ言えてしまうこのあたし」
「ろくな性格じゃないな、お前」
「すみません。先生、怒っちゃいました?」
「怒らないよ。本当のことだから」
「本当ですよね。五十で独身は事実ですもんね」
「……」
佳那寺先生は頭をかかえて、ブツブツとなにごとかをつぶやいた。よく聞くと、ああ、あのときプロポーズにイエスと返事していれば、というようなことを言っている。いや、聞かなかったことにしよう。
すぐに立ち直った佳那寺先生が、沙希先輩に尋ねた。
「で、九頭宮、お前はどうなんだ? サロメ、やりたいのか?」
「……はい」
「それは、どうして?」
「あの……あたし……お笑いも、そのう、悪いとは思わないんですけど……いっぺんでいいから、いい女っていうのをやれたら、と思って」
「いい女? サロメがいい女か? まあ、いい女やるのが悪いとは言わないけどさ。だから、高校生らしいはつらつとしたお話で、いい女をね」
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