「サロメ」を上演したいわたしたち

5/12
前へ
/12ページ
次へ
「五十で独身の先生に言われたくないです」 「なに?」 「ハッ? どうしてかしら? 言っちゃいけないこと言うときだけは、ハキハキ言えてしまうこのあたし」 「ろくな性格じゃないな、お前」 「すみません。先生、怒っちゃいました?」 「怒らないよ。本当のことだから」 「本当ですよね。五十で独身は事実ですもんね」 「……」  佳那寺先生は頭をかかえて、ブツブツとなにごとかをつぶやいた。よく聞くと、ああ、あのときプロポーズにイエスと返事していれば、というようなことを言っている。いや、聞かなかったことにしよう。  すぐに立ち直った佳那寺先生が、沙希先輩に尋ねた。 「で、九頭宮、お前はどうなんだ? サロメ、やりたいのか?」 「……はい」 「それは、どうして?」 「あの……あたし……お笑いも、そのう、悪いとは思わないんですけど……いっぺんでいいから、いい女っていうのをやれたら、と思って」 「いい女? サロメがいい女か? まあ、いい女やるのが悪いとは言わないけどさ。だから、高校生らしいはつらつとしたお話で、いい女をね」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加