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6.千切れた先
一緒に暮らすようになって、話をする機会はぐんと増えた。
両親は、結婚で部署は変わったけれど、仕事の繁忙期が一緒だ。
みちると二人だけで夕飯の準備をして食べることも多い。
学校の勉強も、お互いに得意なところが違うから教えたり、教わったり。
毎日が楽しかった。
ただ、ひとつだけ。どうしようもない思いが膨らんでいく。
風呂上がりのみちるの肌や、ソファで寝てしまった姿に。
⋯⋯俺の欲望は、募るばかりだった。
ごくたまに、隣のみちるの部屋から、声が聞こえることがあった。
「ンッ⋯ア⋯⋯ぁン」
抑えたような、甘い甘い声。
堪らなかった。
部屋の扉を開けて、組み伏せてしまいたかった。
自分自身を何度も扱いて、吐き出した。
そんな日は、みちるの身体を抑えつけて、思う存分貫く夢を見た。
「弟がいるんだ。今度、泊まりに来る」
みちるがそう言った時、へえ、と思っただけだった。
やってきたすみは、一卵性と言うだけあって、顔はよく似ていた。
だが、性格の違いはすぐにわかった。
すみは明るく、誰とでもすぐに打ち解ける。
みちるは穏やかで、ごくわずかの人間と深く交流する。
すみとは、気が合った。学校の友達と変わらない。
ゲームも映画も、同じような物が好きだった。
すみが来ると、みちるは少しだけ一緒にいるが、そのうち部屋に入ってしまう。
俺は、焦れていた。
顔が同じでも、みちるとすみに抱く感情は全く別だ。
すみが来る土日は、嬉しいものではなかった。
ある時、すみが言った。俺が好きだと。
そして、続けて言った。
「でも、知ってるよ。孝也が好きなのは、みちるでしょ。ね、キスして。そうしたら、もうここには来ないから」
すみに、キスなんかしたいとは思わなかった。
誘いに乗る気もない。
すると、すみは言った。
「⋯⋯じゃあ、みちるだと思えばいいじゃん。同じ顔だし」
ずっと、俺はみちるを自分のものにしたかった。
その想いは、まるでコップから溢れる寸前の水のようだった。
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