3.双子

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 交流祭は地域の人に学校を知ってもらう試みだ。文化祭より小規模だが、誰でも参加できる。  俺の通う学校が見たい、と喜んですみはやってきた。  すみの好きになった人は⋯⋯孝也だった。  そんな孝也が、俺の義兄になるなんて。 「みちる!ずるい。いいなあ、あの人と暮らせるなんて」 「暮らしたくて暮らすわけじゃない。同級生だぞ?全然、嬉しくないわ。仕方ないだろ⋯⋯。俺たちは高校生で、今すぐ家を出て行くわけにもいかないんだから」 「うーん、そっかぁ。ねえねえ、ぼく、しょっちゅう泊まりに来てもいい?」  断る理由はなかった。  すみは俺の弟で、孝也は俺の義兄だ。  孝也とすみは、すぐに仲良くなった。  明るい性格の二人は、ゲームも映画も、好きなものがよく似ていた。 「あ、みちるも一緒にやろう!」  誘われても断ることのほうが多かった。  俺は一人、部屋に籠って小説を書いた。  2ヶ月経った時、すみが言った。 「ぼく、孝也に好きだって言おうと思う」  あの日。  部活が早く終わって、夕飯の材料を手に、家に帰った。  玄関は開いていて、見慣れた靴があった。  孝也と、すみの靴だ。 「すみ、来てるの?」  声をかけても、返事はなかった。  玄関から短い廊下を歩いて、リビングダイニングに入ろうとした時。 「⋯⋯ん⋯んっっ」  甘い声がした。  ドクンと胸が鳴る。  嫌な予感がした。 「んッ⋯ア⋯ンっ」  ソファで抱き合って、唇を重ねる二人。  すみの肩を引き寄せて、激しくキスをする孝也。  蕩けきった顔のすみ。  俺の手から、買ってきた飲み物が落ちて、音をたてた。 「⋯⋯みちる!」 「は⋯ぁ⋯⋯」 「あ⋯⋯おれ⋯⋯」  振り返る孝也の驚いた顔と、すみのぼうっとした目。  俺は、荷物を放って、自分の部屋に逃げ込んだ。  ドアが何度も叩かれたが、耳を塞いで出なかった。  涙が後から後からあふれて、止まらなかった。  次の日から、俺は孝也と口を聞かなくなった。  孝也は、なんとか俺と話そうとする。  でも、俺には無理だった。  話しかけられても無視した。目を合わせることもしなかった。  すみの顔が浮かんで離れない。  孝也が好きでたまらない、と言っている顔。  孝也のキスに、蕩けきっている顔。  ⋯⋯同じ顔なのに。  ⋯⋯⋯⋯孝也が、口づけている、顔。
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