4.兄弟

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 人の気配に振り向いた時、見知らぬ男が殴りかかってきた。  男を何とか避けられたのは、父の教えのおかげだ。 「最近は男子だって、襲われることがある」  そう言って簡単な護身術を教えてくれた。  だが、元々が文化部だ。体力はない。相手の脛を蹴って、走って逃げる。  必死で走っても追いつかれて腕を取られ、茂みの中に押し倒された。  相手の目を狙って拳を入れた瞬間、男の体が後ろに吹き飛んだ。 「え!?」  俺じゃない。  吹き飛ばされた男は、道路に倒れたがよろけながら立ち上がった。バタバタと走って逃げていく。  はあはあ、と目の前で息をついていた男が、俺の体を茂みの中から引き上げた。 「⋯⋯大丈夫か?」 「孝也⋯⋯」  目の前には、家にいるはずの孝也が立っていた。  土と木の葉にまみれた俺の身体を、パンパンと掃ってくれる。 「なんで⋯⋯ここにいるんだ⋯?」 「病院に寄ってくるって連絡よこしただろ。一人で夜道なんか歩いてたら、危ないし。すみを襲った奴だって、まだ捕まってないのに」  見に来てよかった。怪我はないか?土を掃いながら、俺の体を確かめ、心配そうに言う。 「でも、俺は男だよ」 「襲われたすみだって、男だろ!!同じ顔してるくせに」 「⋯⋯なに、その言い方!」  二人で揉めている間に警察が到着し、俺たちは交番に行って事情を聞かれた。  あれは、すみを襲った奴と同じだったのだろうか。  孝也がきてくれなかったら、どうなっていたかわからない。  体がぶるりと震えた。 「孝也⋯⋯、来てくれて、ありがと」 「ああ」  二人で夜道を歩く。  何を話せばいいのかも、もう、よくわからなかった。  父母からは、仕事で遅くなると連絡があった。二人が遅くなる時は12時を越える。  灯りのついていないマンションに、孝也と帰った。
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