7人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
居場所
たとえば私が消えたら、誰か悲しんでくれる人はいるのだろうか。
「人は必要とされているから、この世に存在している。この世に存在しているということは、誰かがあなたのことを必要としてくれているからです。
あなたは誰かに生かされているのです」
そんなきれい事を言った人が、いつかいたように思う。だけどそんなことはない。私は居場所がない。だからいつも、やみくもに歩き回る。学校も行きたくない。家にも帰りたくない。だから私はやみくもに歩き回る。
だけどいつも心のどこかで求めている。誰かが、声をかけてくれることを。
たとえばやさしそうなおばさんが、
「ちょっとあんた、顔色悪いよ、大丈夫?ちょっとうちに寄って行ったらどうだい?」
なんて話しかけてくれて、家に招待してくれて。
そこで私は抱えている悩みを相談して、おばさんは、
「それならあんた、家に住めばいいよ。女の子一人ぐらい、いつでも面倒見られるさぁ」
なんて言ってくれて。
私はその優しいおばさんの家で生活して、学校にも行かないで、のんびりほのぼのと暮らすことができて。
......そんな、ありもしない妄想をしながら、私は今日も歩き回る。ただ、やみくもに。
最初のコメントを投稿しよう!