1人が本棚に入れています
本棚に追加
2 仕組まれた再会
「すみません。被験者募集のチラシを見てこちらにきたんですが……」
俺は病院受付の女性に尋ねた。
「それでしたら2階の小会議室になりますね」
病院内の配置図が載ったパンフレットを手渡された。
目的の場所を確認する。
2階、西側廊下の突き当たり。
パンフレットを頼りにしながらもその道のりはとても複雑で「増築に増築をかさねるとまるで迷路だな」と、思わず声に出していた。
目的の場所に到着すると、被験者募集会場と手書きで書かれた張り紙を確認することができた。
ノックをして部屋に入る。
「失礼します」
部屋の中は会議用テーブルが四角く並べられているだけの小さな部屋で、全身黒ずくめの女性がひとり窓の外を眺め立っているだけだった。
凛とした顔立ち。
梳ったような長くまっすぐな黒髪。
透き通るような白い肌。
服のセンスは微妙だが際立つ存在感、つまりはかなりの美人ということだ。
「採用だ」
彼女の第一声がそれだった。
「初めまして、仁志神九墨くん」
「どうして俺の名前を知ってるんですか?」
「クーラーが壊れて、暑さに耐え兼ね、高額のバイトに目が眩んだ?」
おおかたその通りなのだが、なんなんだ彼女は?
「お前には9日間、私の実験につき合ってもらう。これはすでに決定事項だ」
なんとも高圧的な態度だ。
「高い時給を払うのだからそれなりの貢献はしてもらうぞ」
「その前に質問が……」
「大丈夫だ。ラット実験はすでに成功している」
余計不安になる言い回しだ。
「やっぱり俺、帰ります。別の被験者を雇ってください」
部屋から出ようとドアノブに手をかけたときだった。
「まぁそう慌てるな。まずは座って詳細を聞かないか?」
「イスがありませんけど」
「テーブルの上に座りたまえ」
そう言って自らがテーブルの上に腰を下ろした。
なんとも無茶苦茶な人だ。
ただ、せっかくここまで足を運んだ苦労も考慮し、話だけでも聞くことにした。
最初のコメントを投稿しよう!