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「後はクラウさんが名前を書いて、役所に提出すれば晴れて僕たちは夫婦になれるね」
「うん、夢みたい。如月と結婚できるなんて」
ダイニングテーブルに向かい合って座っている僕とクラウさんの間には婚姻届が置かれている。クラウさんの祖父で真呪教の始祖であるラロさんが鏡の中に連れて行かれてから一ヶ月の間、僕たちはラロさんの残した教団資料から政界、財界などの大物にコンタクトを取っていた。
今後はラロさんではなく自分たちが真呪教の後継者として、これまでのラロさんと同様に活動していくと伝えた。ラロさんから何の説明もなく、若い二人の戯言ではないかと最初はみんな半信半疑であったけれど、クラウさんがラロさんの孫であること、そして何より相手が指定してきた数人にpoetic justiceが確実に行われたことで納得してもらえた。
「書き終わったよ」
「やっぱりクラウさんにもミドルネームがあるんだね」
婚姻届に書かれた、結城 ノア クラディア の名前を見ながら僕はクラウさんに訊いた。
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