1-1 誰か……

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 ドンッ 「何してんだよ、バカ井。痛ぇじゃねぇか」 「ごっ、ごめん」  反射的に言葉が出てきてしまう。頭の中では、僕は悪くないと分かっているのに、反射的に謝ってしまう。今だって、僕は自分の席に座っていただけ。いきなり僕の机にぶつかってきたのは彼だ。 それでも謝ってしまう。小学校から始まり中学二年の今まで都合7年間もいじめられていると、謝ることに特化した反射神経も磨かれているんだろうか。 僕の名前は、坂井麗司(さかいれいじ)。完全に名前負け。 僕だってこんな自分は嫌で変わりたいと思ってる。でも、勉強できない、運動できない、背も低く小太りで、顔もパッとしないというかブサイク。そして緊張すると手のひらとか身体中から汗が一気に出てくる。それこそ、サウナに入ってる人みたいに。だからなのか、僕が近くにいると臭いらしい。自分ではわからないし、両親からも言われたことないけれど。  変わりたいと思うけれど、変わろうと思うエネルギーは僕にはもはや残っていない。  だから……  誰でもいいから…………  クラスメートを全員殺してくれないかな…………
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