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プロローグ ②
全ての話の根拠として、母の大好きだった聖書の言葉が用いられた。
また、その話の中に、身勝手に人の命を扱う理不尽な神のイメージは全く無かった。
そして、将来、神が、地球上で生きているもの全ての願いを叶えてくれる、そんな時代が来ることも扱われていた。
もちろん僕は、そんな話をすぐに信じることができるほどお人好しではない。ただ、話を聴きながら、母との再会をイメージすることができたのである。
全世界がパラダイスとなったこの地球上で――
そのとき復活した母がそこにいて――
世界は安全で平和に満ち――
人々は生産的に働いて――
全ての人が若さを保ちつつ永遠に生きる――
――そんな、未来の話。
気づくと、僕の頬を涙がつたっていた。
こんなおとぎ話で泣いてしまうなんて不覚だ。
式が終わると、参列者が僕に近づき、一人ひとり温かく励ましてくれた。
初めて見る顔ばかりなのに、こんなに親しげに接してくれるのは、母がここにいる人たちと築いた絆によるものが大きいのだろうなと思った。
また、葬式なのに僕を含めて誰も喪服を着ていない。そのことが、悲しい雰囲気を半減させる効果となっているようでもあった。
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