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校門を出ると、ひとりの老人がいた。唐突だが、字数が限られているので了承いただきたい。老人はオレたちに声をかける。
「これこれ、少年たちよ、何に悩んでおるのじゃ?」
ヤバイ、どう考えても人格異常者だ。オレはスルーすることに決めた。ところがMは、偏見のない純粋で汚れない心の持ち主だ。怪しげな老人に返事をしてしまった。
「今年の夏は、つまんないって話してました」
「なぜじゃ?」
Mが丁寧に理由を説明するが、字数が限られているので割愛する。老人は言う。
「それは気の毒じゃが、いつもと違う夏なら、いつもと違うことをしたらどうじゃ?」
「とおっしゃいますと?」
「いつもと違う道を歩いて、いつもと違う物に触れるのじゃ」
老人はニタニタ笑うと、どこからともなくギターを・・・結構ボロボロのクラシックギターを取り出すと、ボロロンと音を鳴らした。
「少年たちよ、君らはギターを弾けるかね?」
「ええ、まあ」
そう言うと、老人は見事なフラメンコをワンフレーズ弾いてみせた。
「では、この魔法のギターを授けようぞ。この夏を楽しむがよい」
そういうと老人は、こそこそと歩き去って行った。
「なんだ、あいつ?」
オレが呆れていると、Mがギターの裏をオレに見せた。
「これ、まずいよ」
「なんで?」
「ほら、うちらの学校の備品だし」
「マジか!盗品ってこと?あのジジイ、ヤバイんじゃね?」
ちなみに、言葉遣いが上品なのがM、やや汚いのがオレである。
「返しに行かなきゃ」
「もう学校閉まってるぜ。しかもオレたちが盗んだって疑われるし」
「でも、返さないと」
「もちろん返すさ。けど今日じゃなくてもよくね?もう暑くて死にそう。ちょっとうちに寄ってけよ」
「そうだね。お邪魔するか」
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