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目覚まし時計に叩き起こされて、眠い目を擦りながらベッドを抜け出す。寝ぼけたままに顔を洗い、歯を磨き、朝食を済ませ、制服に着替えて家を出る。慌ただしい朝。夏はもう終わったのだ。
幾分か楽になった太陽の日差しと、弱々しく鳴くセミの声を聞いていると、あの日からもうずいぶんと経ったような気がする。けれどまだ、都会の街の雑踏も、電車の中のアナウンスも、僕はどこか馴染めないでいた。僕の心は、あの緑に囲まれた山間の、空の青の下に置き去りにしてきてしまったのだ。
それまでの僕は、生きるということをしてこなかったと思う。その時まで、僕がそう思ってしていたことは、ただ漫然と物事をやり過ごしていただけに過ぎなかった。そして夏が終わり、今度はそれを自覚しながら、僕は再び、過ぎていく時間の中に身を委ねているのであった。
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