0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの・・・もしかしてですけど、この写真を撮られた方ですか?」
いつの間にか、僕の横に知らない女子生徒が立っていた。
「・・・ああ、そうだけど」
「本当ですか。私、文化祭の実行委員で、ここの展示の担当だったんですけど、この写真がすごく素敵で。それにこの達成感っていうタイトルが、夕日の風景とよく合っていて・・・良かったらどこで撮った写真なのか教えてくれませんか?」
女の子は矢継ぎ早に話して、いつもの僕だったら、きっとたじろいでいたはずだけど、今の僕は違った。
「良いけど、その前に何か書くものを持ってない?できれば太めのマジックとかが良いんだけど」
女の子は持っていた手提げ袋からペンを差し出した。僕はそれを受け取ると、タイトル「達成感」の上に大きく×印を重ねた。女の子の「ひゃっ」という叫び声が聞こえた。
「君の感想は、・・・本当に嬉しかったんだけど、本当はまだタイトルを決めていなかったんだ」
僕はそう言って「達成感」の上に、新たに「目標」というタイトルを付けた。
いつかあの人にもう一度会う―この時僕は心に決めた。今度はもっと高い山の頂上で。
最初のコメントを投稿しよう!