2,もう一つの生活

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「いや、こんなところで弱気になってどうする私!ここは一歩踏み出せば、変われるんだ!」 私は、再び扉の前に立ち、ドアノブに手を伸ばしたその時。 私が、掴む前にドアノブが周り、後ろへとバックするように遠ざかる扉の先から現れたのは、背の高い男性で片手には何故か注射器を持って立っていた。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」 私は、驚きのあまり、つい悲鳴をあげてしまった。 「え、大丈夫かい!?」 男の人は、慌てて近づくが、それを見たもう1人の看護師さんは、「いや、あんたが驚かせたんだよ!」っと、頭を叩き、後ろへ引っ込ませた。 「驚かせてごめんね。あいつも悪気があってやったわけじゃないから、許してやって!」 そう言い、私の頭を撫でた。 「ど、どうして注射器を持っていたんですか…?」 私は、恐る恐る尋ねると、 「え、入院初日はみんな採血をやるって決まりがあるんだけど、聞いてなかった?」 私は、首を横に振った。 すると、男性の看護師さん2人持っていた名簿を確認し、突然険悪な空気漂わせた。 「あ、あの、どうかしたんですか?」 「あ、あー、いや、大丈夫だよ。気にしないでね!」 そう言い、男性は看護師さんは採血の準備を始め、終わると一目散に部屋を後にした。 「何なんだろう…。気にしないでって言われても、気になるんですけど…。」 私は、胸ざわつきが取れず、考えていたら、あっという間に12時になってしまい、その時間に自己紹介をする時間が設けられていることを後から知り、緊張しすぎて鼓動の音が伝わりそうなくらいうるさかった。 「皆さん、今日から一緒に生活する友達が増えました。自己紹介をしてもらうので、みんなよく聞くのよ。」 そう言い、私の出番になり、椅子から立ち上がり、声を出そうとしたら唇が震え出して、上手く声が出せなかった。 「どうしよう。」が頭の中に過って、頭がパンク状態になったその時だ。 バターンッ!!!! 何かが倒れる音がして、皆んな一斉に音のするほうに振り返ると、そこには男性看護師さんが盛大に転んでいた光景が目に入り、その場で笑いの嵐が起こった。
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