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喫茶店のアンケート
カランカラン、と小気味よい音が鳴ると、「いらっしゃいませ!」と聞き慣れない女性の声が聞こえた。
それが少し引っかかりながらも、男は店内の様子には目もくれずにいつもの席へと座り、メニューを見ずに店主が来るのを待った。
「ご注文は、いつものブレンドでよろしいですか?」
声をかけてきたのは、先ほどの声の主と同一人物だった。男はようやくその女性を見上げた。
「えっ、新人さん?よく”いつものブレンド”なんてわかりましたね」
「はい、いつも父から聞いていますので」
男が首を伸ばしてカウンター席の方を見やると、店主のおやじさんが照れくさそうな笑顔を向けていた。
「そうなんだ……。はい、そのいつものブレンドでお願いします」
「はいっ、少々お待ちくださいませ」
娘はお冷やを置くと、スタスタと奥に消えていった。
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