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「来たよ。星流しクジラ」
伝わって来たリーフィの意識に頷きのみで答える。
宇宙の大海原。星々さえも離れ過ぎて虚空しか存在しない場所を、全長五キロを優に越す巨体が悠然と通り過ぎて行く。
体に沿い光が瞬く。
群を識別するのに便利で優美な鰭が大きく広げられた。
腹部を大きくした個体に寄り添うやや小柄な個体は、ヘルパーと役職を命名された若い個体だ。子供を産み育てる母親の手伝いをしながら育児方法を学ぶ。多くは血縁であるが、星流しクジラが全く別の群れから来た若者を拒んだ事例は観測されていない。
それだけ優しい気性なのだろう。クジラには怒りの感情はあっても、長く引きずる憎しみの感情はないとされるから。
余りに物が無さすぎて、空の砂漠地帯と呼ばれる座標。
ここがクジラの繁殖地だとの確認には来たけれど、見られるのは後わずかの時しかない。星流しクジラは、繁殖地に年老いた宇宙を選ぶから。
この宇宙そのものは終わりを迎えつつあり、どんなに感覚を研ぎ澄まして見ても新たな生命の躍動は感じ取れない。
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