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episode 1
埃っぽく薄暗い部屋。牢屋の様に格子が付けられ中はなにもなく、後ろ手に縛られ、鎖で壁に繋がれている。
俺がこんな人生で最低最悪な状況に陥っているのは、いったい何が原因だというのだろう。
俺は、ごくごく普通の大学生で、都内の大学に通っていた。ちょっと人と違うと言えば、恵まれた容姿と、俺がゲイでネコだってこと。綺麗だと形容されるこの容姿のおかげで男に困ったことなんてなく、俺には必要ないけれど女だってホイホイ釣れた。特定の相手を作るつもりはなく、人を好きになるって気持ちがいまいちよくわからない俺は、一夜限りの関係をあちこちで作っては、のらりくらりと生きてきたのだ。
そう、ただ今日――いや、もう昨日になるのか。その時だけは少し違っていた。後腐れない男を選んでいたつもりが、面倒な男を引いてしまった。身体を繋げ、スッキリした俺がさっさと帰ろうとすると、また会いたいだの、付き合いたいだのと縋られ、適当にあしらうつもりがもみ合いになり、ラブホテルの階段から転がり落ちた――はずだった。
しかし、目を覚ました俺の目の前に広がったのは、ラブホテルの階段でも東京の景色でもなく、全く見覚えのない洋風な街並み。そして遠くに聳え立つ城。唖然とした俺は突然現れた男たちにここへ連れてこられ、こんな状況に陥っているという理解不明な状況なのだ。
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