episode 1

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 激しく打つ肌の音と、中に入れたローションの音が卑猥に響く室内は、だだっ広く、きっと外には漏れていないだろう。そんな考えが脳裏に過ぎれば、声を我慢する必要もないと変換され、漏れる声に勢いが増した。  こんなに自分が翻弄されるなんて冗談じゃない。俺が翻弄して快楽に落としてやるくらいのつもりだったのだ。  それなのに。男の腰使いのせいなのか、一度快楽を拾った身体は際限を知らず体中に快楽を伝えてくる。休みない突き上げが、頭の中からトロトロに蕩かされて、快楽に溺れていく瞬間を、ひしひしと感じていた。  その度にぎゅうぎゅうとナカのものを締め付けてしまうのか、時折背中に聞こえる息遣いが乱れる。その事にも喜びを感じ取ってしまい、いつしか自分で腰を動かし求めてしまっていた。  気持ちいいことは好きだ。だから、男をとっかえひっかえ遊んでいた。好きとか嫌いとかそういった感情は面倒だから苦手だけれど、気持ちがいいという感情は単純でわかりやすい。俺にとってセックスとは、気持ちいいからするものだ。そして孤独を紛らわせるモノ――。それが虚しいなんて思わない。 『セックスは、好きな人同士が身体を重ねるから幸せなんだ』  そんな綺麗事だって、いらないのだ。最後に、ヤッた男が熱く訴えていた言葉だった。糞ほどどうでもいい。そんな感情がなくったって、気持ちいいものは気持ちいいんだ。  ラストスパートをかける様ないっそうに深く強い腰使いに、もう何も考えられなくなる。腰が震え、喉を反らせただ気持ちよさの波に乗っていれば、なにも考えなくてもいいのだから。  奥に放たれた熱に、うっとりと瞳を閉じてシーツに沈む。
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