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「なぁ、君、名前なんてぇの?」
ルカが訪ねて来た後には、必ずシーツの交換に誰かがやってくる。ここで行われていることを把握されているってことだろうから、なんとも複雑な気持ちだ。そもそもそのメイドは女の子で、その子自身はそのことをどう思っているのだろうと思いながら、暇を持て余していることもありシーツの交換にやってきたその子に声をかけていた。俺の言葉に一瞬動きを止めるその子はそれでも吹っ切るように手の動きを開始させる。
「喋るなとか言われてんの? 一応奴隷としてここに来たからか? 奴隷とは話しちゃダメって?」
「そういうわけでは・・・・・・」
ようやく声を聴くことができた。この子は絆されそうだ。
「じゃあいいじゃん。少し十分・・・・・・いや、五分でいいから話し相手になってよ。退屈過ぎて死にそうなんだよ」
「・・・・・・仕事があるので」
「じゃあ、二分でもいいから」
しつこく食い下がると、その子は戸惑ったように視線を彷徨わせると、諦めたように俺に向き直った。よし、かかった。
「少しですよ」
「うん。おっけ、おっけ。十分。で、名前は?」
「リアです」
「リア。いい名前だね」
まだ幼さの残るリアは、栗色のふんわりとした髪をハーフアップしている。可愛らしい子だ。
「歳は?」
「十六歳」
「え、子どもじゃん。そんな時から働いてるのか? 偉いな」
「偉くなんて・・・・・・。働かないと、食べていけませんから」
この世界の事はよくわからないが、そんな子どもの頃から働かないと生きていけない世界なんだろうか。奴隷なんかがいるくらいだもんな。
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