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「でも、私は、今の今まで、貴方の事を下に見ていました。軽蔑もしていました。自分はまだ、そこには落ちていないと貴方を見て、ホッとしていたんです」
気まずげに視線を反らしたリアを、俺は真っ直ぐと見つめていた。バカ正直に告げるリアが健気で、別にどう思われていたからといって、怒りなんて覚えなかった。辛い状況にある人間が、自分よりも下の人間を見つけて、安心することは、当たり前の感情だし、自分がギリギリの状況であればあるほど、そんな感情に陥るのは仕方がないことだ。
リアは、それを認めこうして本人の前で懺悔することができている。リアは、落ちぶれてなんかいない。自分の弱い心を真っ直ぐと受け止められる強い心の持ち主だ。
「いいんじゃね? そうやって自分を奮い立たせて頑張れるなら。いくらでも俺を利用すれば」
「どうして・・・・・・」
「俺が、きっとリアが思ってるほど絶望的な状況だと思ってないってことかな。だから、寛大になれる余裕があるのかも」
元の世界に戻れない不安や、先の見えない葛藤とか、全くないわけではない。でも、ラッキーなことに、俺はゲイで、セックスは相手がだれでも気持ち良ければオッケーって思ってるような尻軽な男だったわけで。振り回され、翻弄されてる感が腹が立つ程度で、今置かれている現状が血反吐を吐くほど嫌なわけでもないのだ。
そんな事を言えば、この純粋そうな少女にはさらに軽蔑され、ドン引かれてしまうだろうが。
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