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誰もが大人しく入れられている中、大人しくしているつもりもない俺は怒号を上げ続けていた。
「躾のなっていない奴隷だな」
「は? ふざけんな! ここから出せ!」
通路の奥から一人の年配の男がやってきた。不機嫌そうな顔で俺を見据える。牢の鍵を開け、扉が開く。逃げてやろうと駆け出すが、鎖に繋がれていることを忘れていた。思いきり後ろに引かれ尻餅をつく。鎖に繋がれた手首がズキズキと痛んだ。
「威勢がいいのはいいが、その煩い口はどうにかしないとな」
「なんの権限があって、こんなことしてんだよ!」
「これも立派な商売だ。需要があるから、この商売は成り立っているんだよ。お前もいいところにもらわれたければ少しはしおらしくしておくんだな」
男はそう言って、俺の口に猿轡を噛ませる。拘束された状況では抵抗もできず、口を封じられてしまった俺は、男を睨みつけた。しかし、男はそんな俺の視線になんて動じずさっさと牢を出て鍵をかけいってしまった。
どうしてこんなことに。そもそもここはどこなんだ。日本なのか?
こんな事、日本で許されるわけがない。それに、あの男もこの牢に入れられている男たちも、着ている服が違う。
まるで異世界だ。異世界――? そんなまさか。そんな事、あるわけ。
なんで俺が異世界に飛ばされないといけないんだ。その上、こんな奴隷として売られるなんて。
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