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「うぅ―」
眠って起きても、体調の悪さは改善しないどころか、悪化しているような気がする。
逃亡防止のためか、窓は高い位置に小さな窓くらいしかないが、そこから見える空は茜色だった。そろそろ風呂に入って準備しとかないと。大抵ルカは夜も更けてからふらっとやってくることが多いが、準備は早いに越したことはないだろう。それに、これ以上体調が悪化でもすれば準備どころではなくなってしまう。
どうしてこんなにも、あいつのためにせっせと準備してるのか意味不明だが。自分の身体を護るためと思って気怠い身体を起こした。
フラフラと覚束ない足取りでたどり着いた風呂場。これは、本格的にまずいかもしれない。こんなにも体調を崩したことなんてこれまでにない。もともと健康優良児だった俺は、風邪も滅多に引かないし、インフルエンザにだってここ何年もかかったこともない。
それが密かな自慢だったのだが、もうそんなことも言えないかもしれない。
火照る体を冷やした方がいいのか、風邪なんだろうから温めた方がいいのか。シャワーを出しながらおかしなことを考える。とりあえず、準備を優先しようと覚束ない手つきで後孔に手を伸ばした。
必死になって準備を終え、身体も洗い終えると、湯船につかるのは危険だと判断し、さっさと出ようと立ち上がる。しかし、ぐらりと傾いた身体を支える力も残っておらず、倒れた俺はそのまま意識を失った。
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