十年後・二塁手

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「卒業から、もうすぐ10年かあ」 「びっくりするほど変わんねーけどな」  そう言ってから、俺は一気にジョッキの半分くらいを空けた。  ちらほらちょっと丸くなったり、方言が戻ったりはしているが、集まればあっという間にバック・トゥ・ザ・フューチャーだ。  昨夜は同窓会も兼ねていたのだが、同期のメンバーでは誰が最後に結婚するか賭けるか、という話になった。この時期らしい話題ではある、が。 「やあ、コバ一択だったね!」 「他にないだろ、正直」  本当はそうでもないのだが、たぶん全員の色んな思惑と忖度と深謀遠慮の結果、右のエースが犠牲になったのだ。本人は困ったように笑っていたが、ダメージは皆無だろう。相変わらずサンクチュアリ野郎で、むしろ有り難い。 「フツーに思い浮かばないだろ。相手、人間だと良いな」 「…コバの場合は、地球人相手でもそれなりに驚く気はする」  ミズキの呟きには頷くしかない。  でもさ、みんなとしては、と、相棒は日本酒をちびりちびりとすすりながら曰く。 「タカヒロがまだ、ってほうがびっくりなんじゃない? 引く手あまたどころか両手に余ってたじゃない」 「いや、そういうのは… メンドクサイだろ、なんかいろいろ」  別にそういう話がない訳ではなかったのだが、二十代半ばを超えると、妙に恋人からプレッシャを受けるようになり、何となく鬱陶しがっているうちにもめて別れる、というのが続いた。  今はそれどころではないのに。  心底めんどくさかった。  女性の人生設計の機微は分からないでもないが、どうにも今の自分には合わない、とここ暫くの厄介事を思い出した挙げ句、 「おまえが女だったら、さっさと結婚してるんだがな」  というのが、するりと口から出たのだった。
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