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一 8月31日(月) AM8:36
やっとクーラーがきき始めた、絵画教室の稽古場。
たかやんはその中央で、ハケをマイク代わりに、すうっと息を吸い込む。
「みなさん、おはようございます!」
「おはよーございます!!」
「おはよー……」
「……はよーっす」
朝っぱらから元気なバード、次にぼく、最後にごっちん。
そんな返事を聞いて、たかやんは軽くうなずく。
「えー、みなさん、朝早くからありがとうございます。
集まってもらった理由は、言うまでもありません。
ちゃんと、夏休みの宿題、していませんね?」
そんなたかやんの言葉に、ぼくらはそれぞれ自分の手さげ袋をかかげた。
中には、算数や漢字のドリル、原稿用紙、画用紙……。それらは、清々しいくらいの白紙だった。
首を縦にふるぼくたちを見て、たかやんは満足げに笑う。
「よろしい。ちなみにわタくしも、一切やっておりません」
あぁ、慣れない言葉を使うものだから、裏返ってしまっている。
「今日は、八月三十一日。
つまり、いま、わタくしどっ……、おれたちは、ヤバイ状況にある」
とうとう敬語をあきらめたたかやんは、こぶしを高くつき上げた。
「そこで!
おれは、それぞれが得意な分野を分担してやることを提案したい!
ここに集まる精鋭たちを紹介しよーう!」
「いや、知ってるっつーの。それより早く始めようぜ」
「うるさいな、気分がのらないだろ。最後までやらせてくれよ」
絶妙にツッコんだごっちんにちょっとむっとしながらも、すぐに気を取り直して、たかやんは左手の人差し指を立てた。
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