第三話『祈り』

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第三話『祈り』

 小学生の頃、どこのクラスにでも必ず一人はいるガキ大将タイプの男の子がいた。名前は秀太、苗字はもう覚えていない。秀太はとにかく腕白だった。自分がクラスのヒエラルキーのトップにいることを自覚しており、クラスメイトに対しては傍若無人に振る舞った。かといって表面上はやりすぎることはなく、大人たちはそんな秀太を微笑ましく見守っていたが、当の相馬たちクラスメイトからしたらとんでもないやつだった。  相馬はクラスで特に目立つでもなく、たいした特徴のない子だったと自分では思っている。  そんな相馬ですら事あるごとに小突かれた。新しい鉛筆を買えば、使い古されて持ち手が短い秀太の鉛筆と無理矢理交換させられたし、丁寧に使用していた消しゴムは乱暴にすべての角を丸められたりもした。いじられやすい子なんかはプロレス技をかけられたり、ズボンとパンツをいきなり下されたりと、さらにひどい有様だった。  幼いながらに相馬は、いつかきっと秀太には天罰が下ると信じていた。こんなにみんなを傷つける奴が幸せになるはずなんかない。幸せになんてなってはならない。それが天罰であり、因果応報というものだ。早く罰を受けろ。苦しめ。後悔しろ。  しかし、現実は非常なものだった。
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