独リ書ク恋慕

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「あれ…。これ…どしたの…?」  和人が見つめていたのは例のアルミ缶に入ったガラクタの数々。 「あー…なんかそれがアパートの庭に埋まっててさぁ…」  だらだらと話し続ける景時の横で、和人がスーパーのチラシの裏に描かれた落書きを眺める。  そう…だ。思い出した。  昔住んでいたアパートから母親と二人で夜中に父親の元から逃げる時、あまりに急で持っていけなかったアルミ缶だ。子どもの頃、おもちゃ箱代わりに使っていた…。  確か中には…。 「この中にヤナッシー、入ってなかった?」  突然訊かれて景時が驚いたように叫んだ。 「よくわかったな。そうそう! こン中にヤナッシーが隠れててさぁ…」  もー大変だったんだぜ。  べらべらと話し続ける景時に見えないようにこっそり苦笑する。  なんのことはない。あの頃ずっと一緒に遊んでいたヤナッシーが、また一緒に遊ぼうとしていただけのことだった。  軽く笑って景時の話を聞く和人の背後の窓から、間の抜けた顔の人形が二人を見守っていた。 End
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