独リ書ク恋慕

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「何しに高校いったんだテメェは。お前に恋人なんざ十年早いッ」 「しょうがねぇだろ、惚れちまったんだからッ!」  その怒鳴り声に和人の方が内心恥ずかしくなる。…感情表現がストレートなのが景時の良いところだが。 「百歩譲って、相手が男なのも煙草の匂いさせまくってんのも許すとしてもだ」  和人を指さして男は続けた。 「ここへ来るまでの道中だけで一体何体拾ってきてんだそいつはッ! うじゃうじゃ憑いてんじゃねぇかッ!! ここまでの憑依体質は俺でさえ見たことがねぇッ! こんなんとお前が付き合ったら間違いなく『巻き込む』だろうがッ!」  こんなん呼ばわりされてムッとした顔を隠そうともしない和人の横で、腕を組んで柱にもたれかかったままの折鶴が怒鳴っている男に苦笑した。 「嫉妬か?」 「…ッ、ふざけるなッ! 俺は真面目に…」  面妖な眼で折鶴は笑った。 「兄の口と書いて、呪いと読むぞ? 景隆(かげたか)」 「………………ッ」  思わず黙ってしまった景隆が落ち着いたのを見計らって、景時がもう一度座りなおす。 「……でさ、兄貴。ここへ来たのは兄貴に頼みたいことがあったからで…」 「…なんだ?」  どうせまたロクでもないことなのだろうと、内心思いつつも一応聞いてやるあたり兄はまだまだ弟に甘い。
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